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マーケティングにおける定言命法:間接アプローチによる効果的セールスライティング

著者: オーウェン・パットン
発行所: アメリカン・ライターズ&アーティスツ社
住所: 245 NE 4th Avenue, Suite 102, Delray Beach, FL 33483
電話: +1 561-278-5557
FAX: +1 561-278-5929
HP: www.awaionline.com

©2012年 アメリカン・ライターズ&アーティスツ社


目次

著作権について

本資料は、無断複写・複製・転載を禁じ、米国著作権法および国際条約により保護される。

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本資料は、著作権法およびその他の知的財産法により保護される。許可無く復元、再送信することは著作権侵害とみなす。

著作権物を許可無く復元、販売あるいは展示することは連邦法により禁じられており、違反した場合、民事上および刑事上の厳罰が科される。刑事上および法令上の著作権侵害は合衆国法典第18編2319条によって規定される。


序文:人間の脳の情報処理メカニズム

幼児の記憶力から学ぶ洞察

随分前のことになるが、私の息子がまだほんのよちよち歩きの頃、彼の小さな脳が、まるでスポンジのようだということに気づいた。私の膝に座らせて本の読み聞かせをすると、ほどなくして、驚くほど多くのお気に入りの本を暗記したのだ。しかも一字一句までだ。

親バカぶりを発揮して、私はこれを隠し芸にした。私が本の最初の1~2文を読むと、息子がそれに続いて記憶を頼りに話し出すのだ。私は効果を出そうと、自分の指を走らせて本の言葉の下をなぞった。このすごさがお分かりだろうか。2歳の子供が口ごもったり、ためらったりすることもなく、暗記した内容を声に出すのだ。

脳の無意識的情報統合メカニズム

この話で言いたいのは、人には生まれつき、新しい情報と、自分の脳にすでに蓄えられている情報とを無意識に組み合わせようとするメカニズムがあるということだ。これは驚くべきことだ。

脳は、認識できるデータが少しでもあれば、以前に蓄えた情報を使って、残りの空白を全て埋めるというのだ。

脳の中でそのようなつながりができてしまえば、そこから何かがスタートする。善かれ悪しかれ、自分が見聞きしたと思うものと、自分の脳にすでにある情報が、つなぎ合わされた瞬間だ。


1. 定言命法とは何か?

1.1 定言命法の定義

この便利な仕組みは、定言命法と呼ばれる。元々、哲学者イマヌエル・カントが提唱したもので、人は、可能な状況であれば、以前経験したことのある情報のパターンを識別することで、情報を処理しようとするという傾向があることを指している。

脳は、知覚した新しい情報が以前処理したものと似ていると認識することで、その情報について深く処理することなく、単にカテゴリー分けすることができる。これは、我々が多すぎる情報を処理し、次のことにとりかかれるように助けてくれるメカニズムなのだ。

1.2 セールスライティングへの応用

アゴラ出版の創設者兼社長のビル・ボナーは、カントのこのアイデアを、セールスライティングに応用した。セールスライターは日々、この現象に逆らって仕事をしなくてはならないことに気づいたのだ。

ビルは、読み手が”以前見たことがある”ものとしてコピーを片付けないようにするにはどうしたらいいかを考えた。

1.3 否定的連想の危険性

典型的な否定的反応例

音楽について:

「ああ、この歌もまた、浮気する夫のことを歌ったものだわ。同じようなものは今までにたくさん聴いたことがあるし、もう同じようなものは聴かなくていいわよ。」

テレセールスについて:

「この電話も、長距離電話サービスを変えてくれというセールスだ。どうして何度もかけてくるんだ。電話を切ってしまおう。」

ダイレクトメールについて:

「封筒からして、これもマスターカードの勧誘だな。新しいクレジットカードを作ることに全く興味はないのに。」

これらの例は全て、読み手がすでに知っている何かを連想しているだけではなく、否定的な連想をしている

1.4 定言命法がもたらす課題

情報を処理するためのカテゴリーを作り、それを利用することは、思考を整理するには効率的な方法だ。しかし、この、人が持つ生来のメカニズムは、セールスライターにとっては課題となる

問題となるケース

  1. 既存の否定体験との関連付け
  • 見込み客がすでに読んだことのあるコピーと似ているコピーを作成
  • 見込み客が似たようなオファーを以前に断った経験がある場合
  • 結果:再度見直す必要なし → 早急な拒否
  1. 満足済みの判断
  • 以前同じようなオファーを読んで反応したことがある場合
  • 読み手が「ああ、これと似たようなものを持っている。もういらない」と判断

1.5 成功のための基本原則

コピーで最初にくる文の最大の目的は、見込み客に2番目の文を読ませることだ。そして2番目の文の最大の目的は、見込み客に3番目の文を読ませることだ。

見込み客を十分にコピーに引き込めば、釣ることができる。見込み客がこのあたりまで読み続けてくれたのなら、あなたがコピーに施したことは適切だったということになり、否定的な連想を引き起こすことも防いだことになる。

だが、見込み客が最初の文を見て、すでに見たことのある何かを思い出してしまったら、恐らく見込み客の注意を長く引くことはないだろう


2. 定言命法に対抗する基本戦略

2.1 核心原則

定言命法に対抗する秘訣は、書き手が導きたいと考える方向性を明らかにしてしまうリードは書かないということだ。

効果的なアプローチ

  • 見込み客の予想を裏切るくらいの、彼らの興味をそそる何かを言う
  • 見込み客がすでに知っていて、そのままカテゴリー分けされてしまうようなことを言ってはいけない
  • 予想可能なものは書いてはならない

2.2 成功事例:”今、家具を買わないでください”

例: “今、家具を買わないでください”で始まるラジオ広告

効果的な理由

  • あなたの予想を裏切るものだが、注意を引く
  • これに続いて、論理的な流れでオファーへ移行する(週末に開催されるセールを確認するまでは、家具を買わないように言われる)

心理的効果

“今、家具を買わないでください”というリードは、聞き手の予想とは正反対の方向に進むようにみえる。聞き手は、買うなと警告する広告に興味をそそられ、何が起きているかを理解するまで広告に耳を傾けるだろう。


3. 間接テクニックによる定言命法攻略

3.1 間接テクニックとは

軍事戦略のアナロジー

  • 間接 = 迂回戦術(側面攻撃)
  • 直接 = 正面攻撃

どちらの攻撃法も成功の実績はあるが、側面迂回をして攻撃に気づかれないようにすれば、より大きく前進できる可能性があるのだ。

3.2 間接テクニック訓練の主要理由

間接のテクニックを訓練すべき主な理由は、定言命法にある。

目的

見込み客の思考プロセスを、本人がどこに導かれるか分からないように誘導すること


4. 6種類の間接リード手法

4.1 【手法1】ベネフィットイメージの描写

手法概要

読み手の心に、享受できるあらゆるベネフィットのイメージを描く

成功事例:『インターナショナル・リビング』誌

ビル・ボナーの有名なプロモーション:

“窓から外に目をやると、レモンやサクランボ、イチジクの木の剪定作業を行う庭師が忙しそうに働いています……”

戦略的意図

  • 読み手の注意を引くために、ある考えや感覚を呼び起こす
  • 最初からニュースレターを売り込むようにはしたくない

4.2 【手法2】挑発的質問・ステートメント

手法概要

読み手に対し、自分の商品あるいはサービスについて挑発するような質問をしたり、ステートメントを述べたりする

成功事例:『ポピュラー・メカニクス』誌

『DIY図鑑』のプロモーション:

“この案内は、怠け者やニセ芸術家、あるいは自分の手を汚すことを嫌う”紳士”に向けてのものではありません”

戦略的意図

DIY図鑑を売り込んでいると気づかせる前に、自分の感情とターゲット・オーディエンスの感情とを同調させておきたい

4.3 【手法3】脅迫・警告による解決法要求

手法概要

脅迫あるいは警告を行い、(あなたの商品あるいはサービスが提供する)解決法を請い求めるようにさせる

成功事例:『スイスマネー・ストラテジー』

プロモーションの出だし:

“あなたの財産は危険にさらされています”

戦略的効果

  • 読み手に対してあらゆる恐怖を引き起こさせ、注意を引いている
  • “スイスマネー・ストラテジー”というヘッドラインからでは、セールスライターが何を売り込んでいるのか、読み手ははっきり分からない

4.4 【手法4】驚くべき予想とビッグプロミス

手法概要

驚くような、あるいは気がかりな予想をし、ビッグプロミスにつなげる

成功事例:銀行攻撃予想

“他にはない経営をしている銀行が、2009年に、全世界の主要な銀行を攻撃するでしょう。世界的な混乱は避けられません……”

心理的効果

混乱を予想することで、読み手は、解決策が何なのかを知るために読み進めざるを得なくなる

4.5 【手法5】新情報によるベネフィット提供

手法概要

読み手にベネフィットをもたらすような新たな情報を共有する

成功事例:衝撃的健康ニュース

“これは、健康に関する過去のニュースの中でも、最も衝撃的なものかもしれません……”

心理的効果

自分がこれまでに聞いたことのある健康に関するニュースの中で、最も衝撃的なもの(非常に大胆な主張だ)かどうか確かめるためには、見込み客は読み進める必要がある

4.6 【手法6】通説の誤り暴露

手法概要

読み手の注意を強く引きつけるような証拠で、通説の誤りを暴く

成功事例:保険金受取の常識打破

“世間一般の通念として、保険金を受け取る際には保険会社を急がせることはできない、と言われています。これは間違っています! 数日以内に小切手を手にすることができる、実証された2つの方法があるのです”

心理的効果

ほとんどの人が真実だと考えることに反論することで、読み手は、あなたの”証拠”に耳を傾けざるを得なくなっている


5. 直接的アプローチが効果的な場合

5.1 強力な約束を持つ商品

あなたが売り込む商品が、見込み客が他のことを止めて注目するほど強力な約束を持つ場合、直接的な方法が効果を発揮する

成功事例:ダイエット商品

“1ヶ月間、好きなものを食べて20キロ痩せましょう。保証します”

5.2 直接アプローチの効果的理由

注目の必然性

これは、太り過ぎの人が読めば必ず注意を引かれるような、驚くべき約束だ。ダイエットをしている人なら、必ず興味を持つに違いない。

回り道の不要性

回りくどい言い方をする必要はない。オファーするものに本当に効果があるのなら、それが痩せたいと願う人々にとっての答えとなるのだ。

5.3 定言命法の有利活用

この直接的なリードでは、読み手は必ず、あなたの売り込むものが正確に分かっている。この場合であれば、定言命法を有利に利用していることになる。

連想の活用

体重減少について言及することで、太りすぎやすらっとした人、減量の難しさ、痩せることへの欲求などに関連する、あらゆるメッセージを喚起させるのだ。


6. セールスレター全体への間接テクニック応用

6.1 リードで終わらせない原則

間接的なリードは、読み手を最初の文から2、3、4番目の文へと読み続けさせることができる。だが、そこで終わりにする必要はない。

間接のテクニックをセールスレター全体にわたって利用し、読み手の興味を引き続けることができる。

6.2 実践事例:ケン・ロバーツ社のレター

禁断ワード回避戦略

このセールスライターは、”先物取引”という言葉を使うと即座に拒否されると考え、その言葉を使わないと決めていた

段階的開示戦略

  • 同じプロモーションで利用していたレポートで、少なくとも最初の10ページでは、このコースとマニュアルが先物取引に関するものであることを明らかにしていない
  • 13ページ目に”先物取引”という言葉が初めて出てくる
  • ここまで読み続けたなら、この言葉を見ただけで本を閉じる、ということもないだろう

7. クロージングまで続く間接テクニック

7.1 クロージングの持ち越しテクニック

従来のクロージングの問題

セールスライターはコピーの中であらゆるプロミスを語り、十分な証明で裏付けをする。そしてその中で見込み客は、クロージングに向けて勢いづいてくるのを感じる。

しかし優秀なライターは、まだ見込み客をクロージングに持っていきたいとは考えない。何故か? 見込み客はクロージングを予想し、ノーと言う準備をしているかもしれないからだ。

優秀なライターの戦略

その代わり、優秀なライターは後ろに下がって少し調子を崩し、信頼性を高めるための、ちょっとしたストーリーを語る。

具体的手法
  1. 証拠の提示を追加
  2. 約束を繰り返しつつ、見込み客の興味を維持
  3. 少しだけ、読み手の不意をつき続ける
  4. レターの最後まで、見込み客の注意を引き続ける

7.2 マイケル・マスターソンの定義

マイケル・マスターソンはこれを”クロージングの持ち越し”テクニックと呼ぶ。

メカニズム

  • 読み手はセールストークを聞く準備ができている
  • だが、セールスレターを読み手の予想通りに進める代わりに、少し間接のテクニックを使い、読み手の不意をつく
  • これにより、本物のクロージングに向けて、売り込みに対する抵抗を和らげる助けとなる
  • これは読み手が予想していなかったことになる

8. 実践演習

8.1 演習課題

次に紹介する3通のレターには、直接的なヘッドライン、あるいは直接的なリードが用いられている。6種類の間接のアプローチのどれかを使い、間接的なヘッドラインあるいはリードに変えてみよう。

演習対象(『AWAIスワイプファイル・ベストセレクション』より)

  1. ニューズウィークのレター
  2. アメリカン・エキスプレスのレター
  3. イーストン・プレスのレター

8.2 【演習1】ニューズウィークのレター分析

現在の直接的アプローチ

元のリード:

“読者の皆様

貴方のお名前を確認させて頂いた名簿の内容を拝見しましても、このようなセールスレターをお受け取りになる機会は大変多いことと存じます。このように申し上げますのも、率直に言いまして、あなたの学歴や年収は一般の方とは非常に異なるからです。さまざまな雑誌や投資信託などから優良見込み客として、多くのセールスレターを受け取っていらっしゃることでしょう。”

直接性の問題点

  • 即座に「セールスレター」であることを明かしている
  • 読み手の予想通りの展開
  • 定言命法により「また雑誌の勧誘か」と分類される危険性

間接アプローチへの変換提案

【手法1:ベネフィットイメージ描写】への変換例:

“朝のコーヒーを飲みながら、あなたは世界の動きを正確に把握している数少ない人の一人です。ワシントンの舞台裏で何が起きているか、ウォールストリートの次の動きは何か、そして世界各地の出来事があなたの生活にどう影響するか——これらすべてを、他の人より一足早く理解しているのです……”

8.3 【演習2】アメリカン・エキスプレスのレター分析

現在の直接的アプローチ

元のリード:

“マスターソン様

率直に申し上げて、アメリカン・エキスプレス・カードは万人向けのカードではありません。このため、カード会員に申し込まれた方全員が審査を通過するとは限りません。”

間接アプローチへの変換提案

【手法2:挑発的ステートメント】への変換例:

“この手紙は、「普通」の生活に満足している方には向いていません。もしあなたが、旅行先で列に並ぶこと、現金の心配をすること、身分を証明することに何の疑問も感じないなら、この先を読む必要はありません……”


9. GMSシステムへの統合指針

9.1 定言命法理論のGMS統合価値

GMS既存フレームワークとの関連性

  • 認知状態分析との統合: 定言命法は認知レベル1-2(問題無自覚〜問題自覚)段階で特に重要
  • 超マスターパターンとの融合: PA-CUR-DIF(問題認識×好奇心×差別化)との高い親和性
  • 二軸構造への応用: 物販系・投資系両方で活用可能な普遍的技術

9.2 実践的応用戦略

セールスレター構造への統合

  1. ヘッドライン段階: 6つの間接手法による注意喚起
  2. リード段階: 定言命法回避による継続読書誘導
  3. ボディ段階: クロージング持ち越しによる抵抗軽減
  4. クロージング段階: 予想外のタイミングによる効果最大化

商品特性別カスタマイズ

  • 投資系商品: 手法3(脅迫・警告)、手法4(驚くべき予想)が特に効果的
  • 物販系商品: 手法1(ベネフィットイメージ)、手法6(通説打破)が視覚的訴求と相性良好

9.3 継続的改善への貢献

この間接アプローチ理論は、GMSマスターデータの継続的アップデートにおいて以下の価値を提供:

  1. 既存パターンの深化: 超マスターパターンに心理的深度を追加
  2. 新パターンの創出: 間接手法×GMSパターンの組み合わせによる新戦略開発
  3. 効果測定の精密化: 定言命法回避度を新たな成功指標として追加

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